最初で最後の恋。

約束



それは哀しいことも嬉しいことも一番最初に伝えること
なんだか面白い約束で簡単に結んだ約束だったけど腹を割って話せるってことだと想うとなんだか嬉しくなった

それに浅井君の前じゃ嘘を付かなくていいと思えた


その約束から数日、私は浅井君と毎日一緒に帰っている
悟にいとはあんまりよく話せなくてギクシャクしたまま、会わないように過ごしている

私が学校を出ようとするとポツポツと雨が降っていた

「あ、雨降ってる。浅井君傘持ってきた?」

浅井君はいつも日傘を持ち歩いているからあるだろうと思っていたが浅井君の口から出たのは予想外の言葉だった

「いや、今日曇りって聞いてたから大丈夫かなって、」

「じゃあ、私の一緒に入る?」

少し小さいけどまあ二人なら大丈夫だろうと思い言った言葉が後々公開する羽目になるとはこの時はまだ知らない

「うん、ありがとう。夕空さん」

なんだか急にドキドキして、会話がぎこちなくなって、時々触れる手に心臓が跳ねた。
「夕空さん、傘持ってるの辛いでしょ、俺が代わるよ。」
気を使わせてしまった、確かに背の高さは全然違うから常時いつもより腕を上げなきゃいけなかったけど、浅井君にそんなことさせられない。
「ううん、大丈夫。」
笑顔で答えると浅井君も笑顔で軽く毒を吐いた
「いいよ、俺の方が背高いから。夕空さん疲れるでしょ。」
毒は痛いが傘に触れる浅井君の手と私の手が重なってボッと耳まで赤くなる。
そして浅井君に傘を手渡すとすっと私の方へ寄せられた、肩が濡れているのに気づいてくれた。
また顔に赤みがさす、浅井君の口から出る言葉とは裏腹にその優しさはキュンと胸がなる。

二人で歩いているとそのうち雨が止んだ、雨上がりの夕陽はやっぱり言うまでもなく感動するほど綺麗で時間を忘れていた。

「カエデ?」

そう、悟にいがもうすぐ帰ってくる時間だということを。
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