それは嘘から始まる。
 その言葉に優は頷いて手を離す。

「帰ろうか。俺は荷物を取りに行ってくるね」
「ゆうたんの荷物はここにあるし」
「いつから晴樹はこんなに使えるようになったんだろうね」

 「ゆうたんその言い方ひでぇよ」とふたつのカバンを提げている晴樹は泣き真似をし始めた。

「晴樹。それ、ウザイから」

 そのひとことで、晴樹は泣き真似をやめて顔を逸らした。「その笑顔、怖すぎ」と。
 ふたりのやり取りに、今度は時雨が吹き出して笑う。

「やっぱり、西名くんと北河くんは仲いいね」
「嫌だな、時雨。あたしと時雨も仲いいでしょ? バカな晴樹はほっといて帰ろうか」
「バカじゃねぇし。なら、俺と千恵も仲いいだろ」

 時雨に差し出した千恵の腕を掴んだ晴樹は、「先に行くから」と足早にこの場を去っていく。千恵は口端を上げていた。また頑張れ、と唇が動く。
 残されたふたりは、数秒間顔を見合わせて笑いあった。
 そして、「肝心なことを忘れてた」と優は頭を掻く。ついで、背筋を正して時雨を見据えた。

「天地さんが好きです。――俺と付き合ってください」
「はい。よろしくお願いします」

 時雨は深々とお辞儀をし、顔を上げて優を見つめる。

「ありがとう、天地さん」
「帰ろう、西名くん」

 机に提げられたカバンを手に、優の腕を取ってふたりの後を追いかける。
 ふたりが去った教室は、綺麗な茜色に染まっていた。




end.
< 17 / 17 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

ハードルは高いけど。

総文字数/1,000

恋愛(ラブコメ)2ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
いくらスペックがよかろうが、どうにもこうにもハードルが高いわけです。 短編コンテスト 『オフィスの擬人化★Prince』用に勢いで書いた代物 自·2015.11.29 至·2015.12.02
その時まで、三秒。

総文字数/1,263

恋愛(その他)3ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
アイツとあたしが付き合いだしたのは、ただの気紛れだ。 幼馴染みな男女の恋模様/高校生/※キスシーンあり 執筆開始:2010/12/14 執筆終了:2011/6/2 ※個人サイトに転載済み。
雪の日デートとクレープと

総文字数/1,194

恋愛(その他)2ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
雪の日のデートは嫌いじゃない。 【壁ドン企画】用に勢いで書き上げました。 Start:2014.11.23 End:2014.11.23

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop