それは嘘から始まる。
その言葉に優は頷いて手を離す。
「帰ろうか。俺は荷物を取りに行ってくるね」
「ゆうたんの荷物はここにあるし」
「いつから晴樹はこんなに使えるようになったんだろうね」
「ゆうたんその言い方ひでぇよ」とふたつのカバンを提げている晴樹は泣き真似をし始めた。
「晴樹。それ、ウザイから」
そのひとことで、晴樹は泣き真似をやめて顔を逸らした。「その笑顔、怖すぎ」と。
ふたりのやり取りに、今度は時雨が吹き出して笑う。
「やっぱり、西名くんと北河くんは仲いいね」
「嫌だな、時雨。あたしと時雨も仲いいでしょ? バカな晴樹はほっといて帰ろうか」
「バカじゃねぇし。なら、俺と千恵も仲いいだろ」
時雨に差し出した千恵の腕を掴んだ晴樹は、「先に行くから」と足早にこの場を去っていく。千恵は口端を上げていた。また頑張れ、と唇が動く。
残されたふたりは、数秒間顔を見合わせて笑いあった。
そして、「肝心なことを忘れてた」と優は頭を掻く。ついで、背筋を正して時雨を見据えた。
「天地さんが好きです。――俺と付き合ってください」
「はい。よろしくお願いします」
時雨は深々とお辞儀をし、顔を上げて優を見つめる。
「ありがとう、天地さん」
「帰ろう、西名くん」
机に提げられたカバンを手に、優の腕を取ってふたりの後を追いかける。
ふたりが去った教室は、綺麗な茜色に染まっていた。
end.
「帰ろうか。俺は荷物を取りに行ってくるね」
「ゆうたんの荷物はここにあるし」
「いつから晴樹はこんなに使えるようになったんだろうね」
「ゆうたんその言い方ひでぇよ」とふたつのカバンを提げている晴樹は泣き真似をし始めた。
「晴樹。それ、ウザイから」
そのひとことで、晴樹は泣き真似をやめて顔を逸らした。「その笑顔、怖すぎ」と。
ふたりのやり取りに、今度は時雨が吹き出して笑う。
「やっぱり、西名くんと北河くんは仲いいね」
「嫌だな、時雨。あたしと時雨も仲いいでしょ? バカな晴樹はほっといて帰ろうか」
「バカじゃねぇし。なら、俺と千恵も仲いいだろ」
時雨に差し出した千恵の腕を掴んだ晴樹は、「先に行くから」と足早にこの場を去っていく。千恵は口端を上げていた。また頑張れ、と唇が動く。
残されたふたりは、数秒間顔を見合わせて笑いあった。
そして、「肝心なことを忘れてた」と優は頭を掻く。ついで、背筋を正して時雨を見据えた。
「天地さんが好きです。――俺と付き合ってください」
「はい。よろしくお願いします」
時雨は深々とお辞儀をし、顔を上げて優を見つめる。
「ありがとう、天地さん」
「帰ろう、西名くん」
机に提げられたカバンを手に、優の腕を取ってふたりの後を追いかける。
ふたりが去った教室は、綺麗な茜色に染まっていた。
end.
