また、部屋に誰かがいた
「その子から離れろ!」


そのとき、沙也加の耳にさっきまでとは別の声が聞こえてきた。
突然、彼女の部屋に現れた白い光が言う

「悪しき心の闇に呑まれてしまった低級な霊め、この子に災いをなすことは、このわたしが許さない」

その言葉に反応したかのように
沙也加の目の前にあった黒い影が渦を巻き、苦しみの声をあげながら天井を超え、空へ上っていくのがわかった。
それと同時に彼女の手足も自由となり、部屋の中に満ちていた重苦しさが一気に消えた。

静かになった部屋のなかで、何が起こったのかもわからぬまま、沙也加は相変わらず座ったままだった。
< 106 / 147 >

この作品をシェア

pagetop