一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 高校、大学、そして社会人になってからも、この手の男はたくさんいた。

 自分がどれほど女からモテているかを自覚し、そしてどう扱えば女が喜ぶかを知っている輩だ。

 何人もの女の子に対して、同じようなセリフを言い、同じように扱い、そして結局修羅場になったりしたのを冷ややかに見てきた。

 あの頃は、引っかかる女もバカだ、なんて考えて、自分は絶対にこの手の輩に引っかかったりはしないと誓っていた。

 だから成瀬の手管が罠だとわかっている。


 ……それなのに、胸がざわめいて仕方ない。


 どうすれば、感情と理性の不協和音を消してしまえるのか方法が見当たらない。

 戸惑いの中にある私の瞳をじっと見つめながら、成瀬はそっと肩を抱き寄せる。

「彼氏との思い出なんか俺が消し去ってしまうから、だから俺に先輩の全部をください。絶対に悲しませないから」

 どこか懇願するような成瀬の声。信じたくなる。
 いや、信じなくてもいい。

 いまだけ雰囲気に流されてしまえばいい。

 頷けば、今だけは寄りかかって眠れるだけの時間をもらえる。

 けれど冷静な私の脳は「NO」を告げろと警告する。

「俺、本当に今日、泊まってもいい?」

 なんて意地悪な問いかけをしてくるのだろう。

 その意味がお互いにわからないほど子ども同士じゃない。
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