一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「あり得ない、あり得ない!! バカな想像しないでよね。できたら死ぬまで会いたくない相手だっての!」

「でも……」

 頭を起こした成瀬が、どこか拗ねたような表情をしている。


(やっぱり可愛いな……)


 ほだされるな、ほだされるな、と呪文のように唱えながら、私は苦笑しつつ言った。

「あのね、あの人とは五年近く付き合っていたの。もう少ししたら結婚も考えたいなってお互いに考えていたのにね……気がつけば私の友達に取られていたって、情けない恋愛だったの。だから会いたいなんて欠片も思ってなかった。見たくもないって感じよ」

「先輩を振るなんて見るないね。俺なら絶対に大事にするのに。ねえ、だから付き合ってくださいよ」

「また言ってる。あんたのストラークゾーン広すぎでしょ。成瀬ならよりどりみどりなんだから、なにもこんな不良物件選ばなくても――」

 いいでしょ、と続けたかったのに、成瀬は唐突に私の唇を人差し指で押さえた。


「先輩……俺、結構本気なんだけど」


 触れている指先をスッと横に滑らせて、唇を縁取るように動かす成瀬の指がやけに官能的で、ぞくりと背中が震える。


 ウソだ。


 この男は、ウソをついている。
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