一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「僕とお店に入るのなんてイヤってことかな。そうだよね、ごめん薫。でも一つだけ話を聞いて欲しい」

「……も……たく……い」

 もうあなたの話なんて聞きたくない。

 そうちゃんと言葉にしたつもりなのに、声はかすれて形にならない。

 それは宗一郎には届かず、暗い歩道へと落ちて消えた。

「僕と綾乃は……四ヶ月後に結婚するんだ」

 ガツンと側頭部を殴られたような衝撃を受ける。

(……もう二年だよ?)

 二年も経っているのに、彼が結婚することに衝撃を受けるの?

 惨めで妄執の深い自分に笑いがこみ上げてくる。
 私はこんな根深い妬みを抱いてしまう女だったんだと。

「それで……綾乃の友人として披露宴に来てくれないかな」

 宗一郎の言葉に、私は我慢できずに吹き出してしまった。

「あはは、今更私を披露宴に招待するの? どういう神経しているのよ。新郎の元カノなんだよ? よく呼ぶ気になれたよね!」

 さっきまで喉を塞いでいたつっかえがとれたのか、私の口は滑らかに回る。

 悪態をつきたいわけじゃないのに、どんどん言葉があふれてきて口をついて言葉が放たれていく。
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