ノラネコだって、夢くらいみる
「鈴、この一緒にうつってる男、彼氏なの?抱き合ってるように見えるけど」

 大地のことだ。

「ちがう。これは、学校の階段でつまづいたとこを助けてもらった時のなの。そこをたまたま、撮られた」

「そんなことだと思った。僕との熱愛発覚って件なんだけど…」

「すぐ、誤解とく。ちゃんと説明するようなコメント返すよ」

「堂々と交際宣言するってのはどう?」

 ………!?

「いちる、なに言ってるの?」

「鈴、そろそろ僕の彼女にならない?」

 じっと見つめられる。

「真面目な気持ちで付き合ってるって言ってもいいんじゃないかな。社長を納得させる必要があるけど」



「納得しねーな」


 ………!

 髪をタオルで拭(ぬぐ)いながら、逢阪がこっちへやってくる。それも、腰にタオルを1枚巻いているだけの恰好で。

「ち、近寄るな!」

 この、酔っぱらい。

「社長ならそう言うと思いました」

「わかってんだろ」

「……ええ。では、なるべくことを荒立てず、誤解を解きます」

「へぇ。どうするつもりだ?」

「この写真を使います」

 そう言っていちるがマウスをカチカチっとクリックして表示されたのは、1枚のある写真だった。
< 128 / 212 >

この作品をシェア

pagetop