ノラネコだって、夢くらいみる
「………?」

「だけど鈴は、そのままで勝負できる」

「そう?」

「そうだよ」

 たしかに私は、ほぼ素で仕事している。思ったままにインタビューに応じていたら、乗り切れたりする。でも……

「いちる、何もないことないでしょ。ミステリアスないちるもいいと思うけど、私、ありのままのいちる好きだよ」

「え………?」

「黙っているからって何も考えていないわけじゃなくって、いつだって相手のことよく見てるよね。表情に出ていなくても、声色で元気がないって気づいてくれるし、ほんと優しいなって思う」

 電話で私の声を少し聞いただけで……私が辛いってことにすぐ気づいてくれたいちる。

 モモの嫌がらせのせいでTwitterが炎上した時も、冷静に対処してくれた。

「マイペースだけどここぞという時にはしっかりしてる」

「スイッチのオンオフで切り替わるから」

「スイッチ?」

 そんなもんがあるの?どこに?

「鈴……」

「なに?」

「今、どこにそんなものあるのって思った?」

 ………!

「思ってないよ!」

「思ったでしょ?」

 そう言って、ニヤリと笑ういちる。

___この顔。

 希に見せる、意地悪っぽい笑顔。

「なんでそんなに可愛いの?」

「急に側に寄るなっ……!」

「はは、鈴が照れてる」

 草食系っぽく見えて、案外肉食系なところ。

「離れてよっ……」

「どうしようかなー」

 私の前では時たま、いたずらな少年みたいになる。それは決して、仕事現場では見せない姿。

 それが、私をドキっとさせるのだった。
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