ノラネコだって、夢くらいみる
 ふう、とため息をつく私。

「怒ったか?」

「ううん。むしろスッキリした」

「へぇ」

 私は学校では目立つ。でもそれは、この校則を完全に無視した、奇抜な格好をしているせい。

 だけど、あの場所では違う。

 原宿のあの通りは、個性的な格好した連中が多い。

 つまり、あそこで私が特別目立っていたなんてこと、考え難いのだ。

「あなたのせいだったってなら、色々なことが納得できる」

 そうでもなきゃ、あんなに声がかかるわけなかったんだよ。

「最低。悪趣味。この詐欺師」

 地獄に落ちろ。

「心外だな」

「私を試したの?」

「報告によれば」

 聞けよ。

「お前、有名プロダクションのスカウトマンに声をかけられていたみたいだぞ」

 ………え?

 私に声をかけてきた連中の中に、そんな人がいたの?

「まさか」

「うちのスタッフは優秀だぞ。舐めてもらっちゃ困る」

「………」

 あなたの会社は探偵事務所ですか。

「まぁ、当然だな」

「なにが?」

「鈴は、〝逸材〟だから」
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