ノラネコだって、夢くらいみる
 屋上に着くと、学校指定の紺色の鞄から、お弁当箱を取り出す。

 私は、こうして教室から抜け出しては、どこか一人になれる場所で昼食をとっていた。

 これは別に、校則違反じゃないよね……?

 お弁当は教室で食べるというルールはないはずだ。

 教室という空間は、聞きたくもない会話が飛び交っている。ご飯くらい、美味しく食べたい。

 それにしても逢阪のやつ。

 『徴集かけるまでは自分磨きでもしてろ』って言ったきり、連絡をよこしてこない。

 いつ、連絡してくるつもり?

 スマホの画面に明かりを灯しては、着信ゼロな事実に肩を落とし、またスマホをポケットにしまう。

「好きな人からの連絡、待ってるの?」

 !?

 誰かに声をかけられ、驚いて振り返る。

 この子……どこかで見たような……

 そうだ、思い出した。大地に告白する宣言を謎に私にしてきた、めちゃくちゃ可愛い女の子。

「一緒していい?」

 私は頭を縦にふり、意志を彼女に伝えた。すると彼女は私の隣に腰掛けた。

「別に、好きな人なんていない」

「そっか」

 別に、あの男と会いたいとかそういうのじゃなくて。

 ………人がやる気になったっていうのに。のんきなやつ。

 ド素人の私にいきなり仕事がまわってくるとは、思わない。それにしても放置されている感が否めない。
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