竜門くんと数学のお時間
スパーンと言われて、一瞬言葉をなくした。
すると、ぐらぐらと体を揺らして何を言おうかと考える私の背中を、芹ちゃんが力一杯押した。
「そうとわかれば、竜門くんとこ行ってこいやー!」
「いてっ。まだ数学の時間じゃないよ?」
今は3限が始まる前の休み時間だ。
4限まではまだ時間がある。
「今日の3限は自習だからサボっても問題ない! ほれ花、行ってこーい!」
「えっ、自習なんて聞いてないよっ」
「うるさい、はよ行けーい!」
「え、えっ、ちょっ!?」
ぐんぐん押されて、教室の扉の外へ出されてしまった。
「芹ちゃ」
慌てて扉を開けようとしたが、それより先に芹ちゃんが扉の鍵を閉めてしまった。
「………自習とか絶対嘘だ」
ポツリとつぶやきながら、どうしようもなくなった状況に途方にくれる。
幸いポケットに入れていた携帯の時計を見れば、授業開始まであと1分半。
さて、どうしよう。
この扉の前にいたって、芹ちゃんは入れてくれないんだろうなぁ。
先生が来たとしたら、注意されながら教室に入ることが出来るけれど、でも先生と教室に入るのは何か嫌だなぁ……。
となれば、やることは1つ。
せっかく芹ちゃんが無理やり外に出してくれたのだ。
ここは、ありがたく3限の時間を使うべきだ。