竜門くんと数学のお時間




少し扉から離れると、携帯が軽やかに鳴った。


通知を見てみると、芹ちゃんから。



『竜門くん、水曜3限は特Eで過ごすみたい。がんばれ!』



用意周到、とはまさにこの事か。


芹ちゃん、神様なんですかっ。


戦略家な芹ちゃんに、もはや尊敬である。


「ありがとう!、っと」



感謝の言葉を芹ちゃんに送って、私は特別教室Eの方へ歩き出した。


チャイムはまだ鳴らない。


鳴り始める前に、先生が通る道を通り終えておかないと。


少し早歩きをして、廊下を歩く。



「特Eかぁ……」



通りで数学に来るのがいつも早いわけだ。


水曜日4限の数学の授業は、特別教室Eで行われるから。



「でもなんで3限はお休みするんだろう」



竜門くんのAクラス、水曜日3限はなんの授業だったっけなぁ……。


うーん、わからない。


そそくさと廊下を歩いて特別教室にいく途中のトイレを通った時、授業開始のチャイムが鳴った。


教師がこちらに向かって歩いてくる音が聞こえる。


びっくりして声をあげそうになった私は自分で口を押さえて、サッとトイレに入り込んだ。



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