竜門くんと数学のお時間




「うん、頑張る」



竜門くんの犬を卒業した今、彼女になるチャンスがあるんだから!



「なんで犬やめたいって言ったら不機嫌になっちゃったのか、竜門くんにちゃんと聞いたらいいよ」


「うん」


「話、ちゃんとしなね」


「うん、ありがとう芹ちゃん」



芹ちゃんのおかげで希望が見えてきて、私は力強く頷いた。




さて涙を拭った私は、芹ちゃんと共に授業に遅れて出ることに決めた。


一応テスト前だし、数学の時間は後ろに座る彼との特別な時間だからだ。



「遅れてすみません」



あまり音をさせずに教室に入りたかったのに大きな音が鳴りながら開く扉。


その音に芹ちゃんと渋い顔をしながら、特別教室Eに入った。


先生から事情聴取をされる芹ちゃんは、「吉野が体調を崩したので、それに付き添い遅くなりました」と話をしていた。


確かに、泣きまくって体の水分が減った気がして少し体調を崩したので間違いではない、よね。


20分遅れで授業に出る人なんて珍しいだろう、隣の席の子には「サボりじゃなかったの?」と聞かれてしまった。


それには曖昧に笑って返して、私は席に着いた。


後ろの席には、俺様御曹司、竜門くんの姿。




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