アナタの過ち



「は?何言ってんだよ。自分でしろ」

『嫌で…っ』

”嫌です”
そう言い終わる前に私の視界が揺らいだ。
どうやら蹴られたらしい。

色んな記憶が一気に蘇り、恐怖感と吐き気に襲われ涙が出そうになった。

「しろ」

『…』

「おい」

『…』

「聞いてんのか」

私は声がうまく出せずただ無言で頷くしか出来ない。

「今すぐ」

彼の手には開かれた私の携帯。
画面には不在着信を知らせるマー ク。

…お母さん。

震える手で電話を掴む。
涙を堪えながら。

でも。
なかなか発信ボタンを押せない。

「なにやってんだよ。早くかけろ」

この人、怖い。

私は無言で携帯を耳にあてた。


『あっお母さん、今日友達のとこ泊まってくる!』

早口で言い終えたあと、すぐに電話を切った…フリをした。

私は電話なんかかけていない。

かけているような演技をした。

バレませんように…。
そう願わずにはいられない。

携帯をサイレントマナーに切り替え、男の視線を気にしながらバックに戻した。



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