見えない何かと戦う者たちへ

にい


―――文化祭当日



(昨日結局
質問の答え聞けなかったな…)

明日香は受付で客の対応をしながら
昨日のことを考えていた。

彼女の横で同じように考え事をして、
完全に手が止まっている美結がいた。




今日は文化祭当日だというのに
まさかの雨だ。

まだザアザア降りでないだけましだが
やはり梅雨の時期に学校行事をするのは間違いだろとみんな頭のどこかでつぶやいた。

夕方からはかなりひどい雷雨になるらしく、
みんなの不安は消えないまま文化祭はスタートしてしまった。





「美結!明日香!
その君見てない?さっきから探してるんだけどどこにもいなくて…」



クラスメイトの女子がなにやら慌てた様子で
やって来た。

なにかトラブルでも起きたのだろうか。

二人は目を合わせ目で合図した。





「私も朝から見てないわ、美結は?」




明日香につられ
クラスメイトも美結を見つめた。

曇った表情を見せた美結は
小さな口で小さな声をもらした。




「その君は今日、来ないと思う…」

「えっ具合でも悪いの?
うわーどうしよう、その君いないのかぁ」

「なに?トラブル?」

「あっ垣内!ちょうどよかった!ちょっと来て」





たまたま通りすがりに来ていた垣内が
トラブル解決のために連行されて行った。

明日香の記憶が正しければ
たぶん垣内は別のトラブルを解決して戻ってきたところだと思うが…気のせいなようだ。

明日香は
首根っこを捕まれズルズルとひこずられる垣内を
見て、隣にいる美結をもう一度見た。







「…美結、そのとなんかあった?」







下を向いていた美結は
ハッと我に返って顔を上げた。


隣の明日香に気づいて
いつものようにニコッと笑った。


顔で"なんでもないよ"と
言われているような気持ちになった。














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