Another moonlight
プロローグ─ないものねだり─

遠く離れていくあいつらの背中を
唇を噛んで眺めていた


オレには縁のない 華やかな世界で
まばゆい光を放つあいつらの姿を
遠く感じて 寂しさを覚えた



人に誇れるものなど何も持たないオレは
一人取り残されて 夢をあきらめ
つまらない大人になった


それでもオレがここに留まったのは
守りたい大切なものがあったから


友達のふりをした笑顔の下で
オマエが欲しいと何度思っただろう

他に何もなくてもいい
オマエが笑ってくれるなら


大人になった今も ガキの頃の初恋を
叶えることも 終わらせることさえもできず
オレは今日も オマエの隣で
友達の顔で笑って 胸を痛める


もしオレがあいつらのように
眩しい光を放つ存在になれていたなら きっと
オマエが好きだと胸を張って言えたのに


ないものねだりをしてみても
今となってはもう昔の話


懐かしんでも悔やんでも
遠いあの日に見ていた夢は
なにひとつこの手には戻らない



夢も本当の恋もあきらめた 臆病なオレを
月明かりは どこへも導いてはくれない


オレは今日もまた 何食わぬ顔をして
オマエの隣で 不毛な恋に溺れている





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