Another moonlight
誘惑、疑惑、困惑



翌日。

サロンの定休日だったその日、ユキは銀行に足を運んでいた。

通帳記入をして残高を見たユキは、眉間にシワを寄せてため息をついた。

(いくらなんでもいきなり500万は…。今後のこと考えたら全財産はたくわけにもいかないし、これじゃ半分も出せないよ……。)

タカヒコからは、せめて半分くらいは出して欲しいと言われたけれど、そんな大金が簡単に出せるわけもない。

店舗はともかく、結婚資金をどうするつもりなのだろう?

物件の月々のローンを抱えることになるのに、手付金や頭金の段階で全財産を使った上に借金までしてしまったら、その後の生活費や、今営業している店の経営資金、新店舗オープンまでにかかる内装や設備、商品の仕入れなどの資金はどうすればいいのか。

(店のためにいきなり借金まみれ…?やっぱりなんか…おかしくないか?結婚ってこんなんじゃないような…。)

ユキはなんとなくモヤモヤしながら、数日分の生活費をおろして銀行を出た。

「おっ、ユキちゃん!」

銀行を出て少し歩いたところでマナブと出会った。

「マナ…こんなとこで会うなんて珍しいね。」

「そう?オレしょっちゅう来てるよ。店の金の預金とか両替とか。ユキちゃんは休み?」

「うん、週に1度の定休日。」

「じゃあ…時間あったらお茶でもどう?ケーキでもおごるよ!」

「ホント?じゃあ、ゴチになろうかな!」

< 130 / 220 >

この作品をシェア

pagetop