Another moonlight
ホイップマーガリンを塗ってメイプルシロップをたっぷりかけたパンケーキを美味しそうに食べるユキを、マナブはニコニコ笑って眺めている。

「うまそうに食うなぁ…。」

「美味しいよ。やっぱ食べる?」

「いや、いい。甘いものはあんまり。」

「ふーん…。」

ユキがパンケーキを食べ終わると、マナブはコーヒーのおかわりを2つ注文した。

マナブは冷めたコーヒーを飲み干して、くそ真面目な顔でユキの顔を見た。

「で、こっからが本題なんだけど。」

「本題?」

(本題もなにも…前フリとかあったっけ?)

ユキが冷めたコーヒーを飲み干すと同時に、コーヒーのおかわりが運ばれてきた。

「この間、うちの店で彼氏と話してたじゃん。ユキちゃん、結婚すんの?」

「あー…うん…。聞いてたんだ。」

(マナの耳は地獄耳なのか?)

ユキは少し気まずそうに温かいコーヒーを一口飲んだ。

「それ、ホントに納得してる?」

「え?」

「あの時のユキちゃん、オレには全然幸せそうには見えなかった。それでも結婚しようと思った理由があるの?」

本当は結婚を躊躇している気持ちが、そんなにわかりやすく顔に出ていたのかとユキは少し驚いた。

「私ももういい歳だし…みんなどんどん結婚してくし…。そろそろこの辺で覚悟決めないと、一生一人なんじゃないかなって。」

「そんなことはねぇだろう。それにユキちゃんが思ってるほど結婚は甘くないよ。」

「経験者が言うと説得力あるわ。」

ユキは少し笑ってカップに口をつけた。

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