Another moonlight
アキラに好かれるためにユキになろうとするなんて狂気じみている。

アキラの背筋に冷たい汗が流れた。

「似てねぇし…どんな格好したってカンナはカンナだろ…。」

アキラが絞り出すようにそう言うと、カンナはアキラの両腕をグッと掴んだ。

「じゃあ…どうしたらアキくんは私のこと好きになってくれるの?いつになったらカンナが好きだって言ってくれるの?どうすれば…あの人のこと忘れてくれるの?」

これ以上はもうごまかしきれない。

カンナに対しても、自分に対しても。

アキラはカンナと目を合わせないようにうつむいて、自分の腕からカンナの腕をほどいた。

「…ごめん。カンナと一緒にいるの、もう無理だ。」

「…え?」

「別れてくれ。」

大きく見開いたカンナの目から、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。

「どうして…?私はこんなに好きなのに…どうしてそんなこと言うの?私、アキくんのためならなんだってできるんだよ?もっともっと頑張ってアキくん好みの女になるから…別れるなんて言わないで…。」

カンナは泣きながらアキラにしがみついた。

その強い力にアキラは驚く。

「カンナを大事にしようとも好きになろうともしたけど…やっぱどうしても無理だった。これ以上一緒にいても、カンナをもっと傷付けるだけだと思う。」

「イヤ…別れたくない…。アキくんがいてくれるなら私は…あの人の代わりでもいいの…。だから好きだって言って…。一緒にいてよ…。」
< 142 / 220 >

この作品をシェア

pagetop