Another moonlight
「そういえばユキ、アキのお見舞いには行った?」

ミナがタバコを吸いながら何気なく尋ねると、ユキは黙って首を横に振った。

「一度も?」

「…うん。行ってない。」

「なんで?行ってやんなよ。アキ、めちゃくちゃ寂しがってんじゃない?」

「でも…仕事終わる頃には面会時間も終わってるし…。」

いつになく歯切れの悪いユキの様子に、ミナは首をかしげた。

「仕事なら私が変わるけど?それか、昼間のユキ指名の予約入ってない時間に行ってくれば?」

ユキは少し考えるそぶりを見せた後、もう一度首を横に振った。

「んー…いや、やっぱいい。」

「なんで?命の恩人にお礼も言ってないのに?」

「うん…そうなんだけど…なんとなく顔合わせづらいって言うか…。」

やっぱりいつものユキとは様子が違う。

ミナにはユキがなんだかソワソワしているようにも感じる。

「アキが体張って助けてくれて、ケンカはチャラになったんじゃないの?」

「だから元々ケンカはしてないってば…。」

ユキはボソボソと小声で答えて、ジントニックを飲んだ。

「じゃあ顔合わせづらい理由は何?」

「……わからない。けど、なんか。」

「なんか?」

「友達やめるってのはまだ有効みたいで。」

ミナはユキの言葉に驚いて、水割りを吹き出しそうになる。

「はぁ?!何それ?!」

ミナが思わず大きな声を出すと、マナブは興味津々な様子でニヤニヤしながら二人の前に立った。

「楽しそうだなぁ。」

「えっ?いや、別に楽しいことなんか話してないよ。」

ユキが慌てて否定すると、ミナは呆れた様子でため息をついた。
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