Another moonlight
その日の夜。

その日最後の客を送り出したユキは、珍しく閉店まで残って仕事をしていたミナと一緒にサロンの後片付けをしていた。

普段は娘のために6時頃には仕事を終えて帰るミナだが、冬休み中の娘が友達の家に泊まりに行くことになったので“たまには一緒に飲みに行こう”とユキを誘った。

「今日は二人だから早く終われるね。」

「さっさと終わらせて早く飲みに行こ!」

「よし!明日は定休日だしゆっくり飲もう。」

サロンを出た二人はマナブのバーへ足を運んだ。

あの事件以来、ユキがここに来るのは初めてだ。

カウンター席に並んで座り、ユキはジントニック、ミナはウイスキーの水割り、それからいくつかの料理を注文した。

マナブはカウンターの中から、ユキにジントニックを手渡して笑いかけた。

「ユキちゃん、久しぶりだね。」

「あー、うん。さすがにちょっとね。」

「だよね。でも元気そうで良かったよ。それにしても、ミナちゃんが来てくれるの珍しいじゃん。」

ミナはウイスキーの水割りをマナブから受け取り、タバコに火をつけた。

「冬休みだからね。娘が友達の家に泊まりに行ってんの。たまには母も羽伸ばさないと。」

「じゃあ時間気にせずゆっくり飲んでってよ。これ、サービスしとくから。」

クリームチーズとクラッカーを盛り付けた皿をカウンターのテーブルに置いて、マナブはニコニコ笑った。

あんな事件があったにもかかわらず、店は変わらず繁盛しているようだ。

テーブル席の客から注文を受けた若いスタッフがオーダーを伝えると、マナブは注文を受けたカクテルを作り始めた。

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