Another moonlight
アキラはまた酔いが回ったのか、ドキドキし過ぎて、身体中をすごい速さで血液が巡っているような感覚に陥る。

「そんなに急いで飲んで大丈夫?」

少しぼんやりしているアキラの顔を、ユキが心配そうに覗き込んだ。

アキラは頬杖をついて、ぼんやりした目でユキの方を見ている。

「…なんで来なかったんだよ。」

「え?」

「オレのことなんてどうでもいいのかよ…。薄情者…。」

ユキは少し困った顔をして、アキラから目をそらした。

「……アキが言ったんでしょ。」

「オレが何言ったって?」

「友達、やめるって。」

ばつの悪そうな顔をしたユキがかわいくて、今すぐユキを抱きしめたい衝動がアキラの胸に込み上げる。

(なんだその顔…かわい過ぎんだろ…。思いっきり抱きしめてぇ…。)

アキラは少し手を伸ばして、ユキの髪を指に絡めた。

ユキは驚いてアキラの方を見た。

「確かに言ったけど…友達やめたら会えねぇのか?」

「えっ?」

「オレは…ユキに会いたいって、ずっと思ってた。ユキと会えるなら、もう友達でもなんでもいい…。」

アキラはユキの髪から指を離し、頬杖をついて目を閉じた。

「アキ…酔ってる?」

「酔ってても酔ってなくても、オレは昔からずっとそう思ってるっつーの…。」

ユキは目を閉じているアキラの顔を眺めた。

アキラの顔なんて昔から見慣れているはずなのに、なんだかやけにドキドキする。

(ユキに会いたいって…アキも思ってくれてたんだ…。)

アキラはただ酔って口走っただけなのかも知れないけれど、それが本心なら嬉しいとユキは素直に思う。

それはなんとなくくすぐったいような、照れ臭いような、不思議な気持ちだった。

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