Another moonlight
一瞬、ユキに触れたい衝動が込み上げ、思わず手を伸ばした。

ユキの頬に触れる手前で我に返ったアキラは、その衝動を抑えようと伸ばしかけた右手を慌てて左手で掴んだ。

(なに考えてんだ!!バカじゃねぇか?!)

ユキはそんなアキラの気も知らずに眠っている。

今までだってユキの寝顔なんて何度も見ているはずなのに、この先もユキはきっと自分のものにはならないのだと思うと、アキラの胸がしめつけられるように痛んだ。

アキラはおずおずと手を伸ばし、ユキの頬をそっと撫でた。

「オレだって男だぞ…?ちょっとくらい警戒しろよな…。」

自分のことを友達だと思うからユキは安心しきっているのだろうと思うと、アキラは複雑な気持ちになる。

(本当は友達なんかじゃなくて…オマエの特別な男になりたかった…なんて、今更だな…。)

アキラはひとつため息をついて、ユキの頭を優しく撫でた。

「帰るわ。じゃあな、おやすみ。」

こんな時、恋人ならおやすみのキスのひとつもできたんだろうなと思いながらアキラが立ち上がった時、眠っているはずのユキが涙を浮かべた。

「ん…?」

アキラがしゃがんで顔を覗き込むと、ユキは泣きながら口元を小さく動かした。

「…っと……きだっ……。」

ユキの声は途切れ途切れで、よく聞き取れない。

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