オオカミ御曹司に捕獲されました
梨花の周りに社員はいない。

彼女に近づき、そっと声をかける。

「ただいま」

「わっ」

梨花は俺の声に凄く驚いたのか、椅子からガタッと大きな音を立てて立ち上がった。

「あっ……杉本さん、お帰りなさい。あの……資料は机の上に置いておきましたから」

梨花はあたふたして俺と視線を合わせてくれない。

やはり避けられている。

「これ、水浸しにした本。あと、お菓子は良かったら食べて。美味しそうだったから」

梨花の机の上に、ラッピングされた本とマカロンが入った紙袋を置く。

彼女の髪を撫でようと手を伸ばしたが、止めた。

少しは引いて様子を見るか。
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