今夜、あなたの胸で……《完全版》
俯いたまま口ごもっているわたしを横目に、悠貴は無言でわたしの横を通りすぎていく。



「悠貴!」



すぐにその背中を呼び止めたけれど、それは少し遅くて。


視線の先には対面している二人の姿。



「そっか……」



慌ててその場へ行ったときに、ぽつりとそう呟いたのは悠貴。



「やっぱり、俺じゃ駄目だったってこと?」


「え」



どういう意味なのかわからなくて首を傾げる。



「うまくまとまったんじゃねーの?」


「……」



悠貴の言葉を聞く限り、わたしがずっと好きだった幼馴染みが目の前にいる琉生だと知っているように思える。


けれど、幼馴染みが琉生だなんて言ったことはないし、訊かれたこともない。


なんと答えればいいのかわからなくて、悠貴に視線を止めたまま黙っていると、わたしが疑問に思っていたことに答えてくれるように口を開いた。
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