あの日ぼくらが信じた物
 もしかしたら明日もみっちゃんが悲しい気持ちで居るかも知れないという心配は杞憂に終わったようだった。

電話の向こうから聞こえて来たのは紛れも無くいつものみっちゃんだったから。


『いま起きたって事は……そうね。じゃ、ご飯食べたら神社に来てね?』


「荷物も有るからみっちゃんちに行くよ、それに……」


『なぁに?』


「それに、みっちゃんと一緒に歩きたいしさ」


『ほんとにぃ? 誰かに見られちゃうかも知れないわよ?』


 電話の声色がたちまち明るくなった。やはりまだ自分の背がぼくより高いことを気にしているんだ。


「全然構わないよ。寧ろ見せつけてやりたいんだ、みっちゃんのこと」


 いつの間にか受話器にぺったりと貼り付いていた母が、微笑みながら涙を浮かべ、何度も頷いている。


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