あの日ぼくらが信じた物
「はぁっ、はぁっ。もう一回、もう一度だけやってみましょう?」


 彼女は真剣な顔をして、頬をピンク色に染めながらぼくを見た。


「うん。ヨォシ、も少し頑張ろう」


 汗がぼくの頬を伝って一筋流れ落ちた。

空は晴れ、風も無く、神社の境内は蝉の声で溢れ返っている。

ぼくの視線は、一心に願う彼女をよそにそのうなじを伝う雫や、汗で透けそうなTシャツに釘付けだった。


「必ず上手くいくわ? 石の力を信じるのよ」


 でもぼくらの努力は徒労に終わる。その白い石はただそこに在るだけで、何の変化も見せない。

それはどうしても彼女を見ては気を逸らせてしまう、ぼくの所為なのかもしれないけれど……。





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