あの日ぼくらが信じた物
「過去の光代を病気にさえしなきゃいいのよ!」


 そうだ! その手が有った。


「でもおばあちゃん、みっちゃんはもう……心が結ばれた彼女は……」

「フフフ。何も恋人同士だけが心を同じく出来る訳じゃないのよ?

 光代を取り戻したいのは私も一緒。あんなに素敵な孫ですもの。だから私とあきらくんは同志よ?

 ただね……」


 おばあちゃんは急に深刻な顔をして、掴んだぼくの手をギュッと握り締めた。


「ただ、どうしたんですか?」


「この『思い出石』はね、普通は1回きりの往復切符なの。それもまっさらな白い石でよ?」

「この石は灰色ですよね」

「そう、だから……もしかするとこっちには帰って来れないかも知れない」

「それでもいいです! みっちゃんさえ生きられるなら、ぼくはどうなったっていい!」


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