SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……ゆうと……」


ツンとした横顔。

怒ったようなその顔は、耳までほんのり赤かった。


……ふうん、そっか。


「良かった。あたしも、湧人が好き」


「……え?」


「湧人も、お婆ちゃんも。あと、黒木、ユリ、一樹。それから、玉ちゃん、柳、小暮……」


「……へぇ」


指折り数えるあたしに湧人は微妙な顔をする。


「……はあ〜、」


何故か大きなため息をついた。



"……チュンチュンチュン……"


そうこうしているうちに朝焼けが青い空に溶けてゆく。

吸い込まれるほど眩しい青空……


「……きれい……」

すると、


「……みくが笑うの、初めて見た……」


ぼーっとしながら湧人がつぶやく。


……?


「あたし、今度は笑ってた?」


「……うん……」


「……変、だった?」


「……ううん、すごいきれい……」


言ったあと湧人がハッとなる。
そらした顔はまたもほんのり赤かった。


——ゴロン……

あたしは芝生に寝転がる。
なにやら急に睡魔が襲ってきた。


「……湧人。眠い。あたし、寝る……」


「……あっ、みく! こんなとこで寝ちゃだめだろ!」


「……湧人も寝てない。一緒に寝よう……」


「だから! ここで寝ちゃだめだってば!」


湧人の澄んだ声と、まだ涼しい朝の風が気持ちいい。

穏やかな空気に包まれながら、あたしは深い眠りに落ちた……

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