SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「もちろん、奴らが一番ブチ切れてんのは黒パーカーっすよ」
「どうしても落とし前つけたい山川組と、親の顔に泥を塗られた覇鬼。奴らは共に黒パーカーの男の捜索を始めたんだ」
「ところが、これがなかなか見つからないらしくて……」
「シビレを切らした山川組が、覇鬼に族狩りを命じたんだ」
「……ぞく、狩り?」
「要は、疑いのある奴を片っ端から排除しろって事らしい」
「そんなに黒パーカーが強えなら、ケンカ慣れした族の可能性大だからな」
「……そんな……」
「こないだは覇鬼んトコにも黒パーカーが現れたらしい」
「海辺でみんなヤラれたって話だ」
「……うみべ……?」
……あ。
もしかして、あの時の……
思いあたって息をのむ。
「二度もヤラれて奴ら怒り心頭で…… 最近は特に滅茶苦茶だったよ。族じゃねえ格闘家とかも被害にあって」
「しまいにはアイツら、奏太が黒パーカーじゃねえかって疑い始めた……」
「……えっ……」
「奏太と黒パーカーじゃ、ガタイも腕っぷしも全然違うっつーのに」
やれやれと、少年たちはため息をこぼした。
「…………」
あたしはぼーっと宙を眺める。
頭がこんがらかって、うまく状況がのみこめない……
……え? ……あた、し……
急に目の前がグラグラする。
「美空さん? どしたんスか?」
「さっきから何か変ですよ?」
……あた、し……
「……ご、めん……」
ひとこと言うのが精一杯で、
あたしはガクッと膝を落とした……