SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

◇決着の時

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"……ウィ——ン……"


「「いらっしゃいませ〜!」」


……翌日、

例によってお昼を食べ損ねたあたしは、奏太に連れられ、近くの牛丼屋さんへ来ていた。


「「…………」」


"……カタ、……カチャ、"


食べ進める音だけが二人の間を行き来する。


「「…………」」


“ ……チャ、……カチャ……”


「……おい」


奏太が先に口を開いた。


「どうした。おまえ、今日はやけに静かだな」


手を止め奏太は横目であたしを見る。


「……あ〜。 ……うん、」


あたしはそっとハシを置いた。


「……あのさぁ。あたし謝らなきゃいけない。奏太に……」


「何のことだ」


「知らなかったんだ。いいと思ってやってたけど、迷惑だった。あたしのせいだったんだ……」


「……は?」


「最初があたし、ううん、あっちであたしがバッてやって、そしたらあっちがガアッてなってまたあたしがバッてやってあっちが……」


「……おまえっ! ちゃんと日本語を喋れ!」


「……とにかく、ごめん。今までの事、あたしみんなに、奏太に迷惑かけていた」


あたしはペコリと頭を下げた。


「…………」


奏太はじいっとあたしを見る。


「何を今さら」


前を向くと、また目の前のどんぶりに手を付け始めた。


「……確かに、おまえの非常識な行動には驚かされてばかりだが、迷惑とはまた違うだろう。みんなおまえには感謝してるし、それに、」


「……?」


「謝るのはこっちの方だろうが。扇龍がどれほどおまえに迷惑をかけた。オレだって……」


グイッと水を流し込む。


「……悪かったな。あん時、おまえ殴っちまって……」


目を細め、奏太は苦い顔をした。
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