心外だな-だって世界はこんなにも-
「ねえ、大根おろしって好き?」
これが美紀の俺に発した最初の言葉だった。
当然驚いた。隣のクラスの、名前も知らない女子からの第一声が、「ねえ、大根おろしって好き?」なのだ。驚かない人はどうかしている。
実際、俺もそう訊かれた意味がわからず、友達も俺と同じように驚いたのか、俺と彼女を交互に見ることしかできないようだった。
考えた。これは何かの隠語。揶揄じゃないかと思ったのだ。
大根おろし、大根おろし、大根おろし……。何度頭の中で反復しても、思い浮かばない。大根おろしは大根おろしであって、それ以上でもそれ以下でもない。
彼女はというと、俺が答えるのを上目遣いでずっと見ている。待っているのだ。
いや、上目遣いにしては、誘惑的じゃない。かと言って嫌悪感むき出しでもない。目線もずっと上で、まるで俺の頭頂部を見ているような感じがする。
ん? 頭頂部?
俺は、頭を触ってみた。頭の上には黒々と艶のある髪の毛の他に、何かザラザラしたものがあった。
消しカスだった。