心外だな-だって世界はこんなにも-
ACT3 素敵なエゴ





家からほとんど出ない私でも、この日は必ず外に出る。



高校卒業と同時に、お母さんが「必要だから。」と言って、結局必要のなかった黒のリクルートスーツを着て、バスに乗り、近くにあるスーパーで菊の花を買って向かう場所。



そこには、すでに先客があって、その人に見覚えはなかったが、知っている人。というか、多分この人だろうなという人がいた。



「あの……恭平さん……ですよね?」



そう声をかけると、男の人は振り返り、私を見るなり首を傾げた。



「どちらさん……ですか?」



「あの……藤代美紀と申します。」



私の名前を訊くと、男の人は大きく何度も頷いた。



「キミが美紀ちゃんだったのか!」



私は深々と頭を下げた。




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