心外だな-だって世界はこんなにも-
「わかった。そういうことなら仕方ないな。しかし、俺の知ってることと言えば、あの雪の日の夜までのことだぞ?」
「雪の日の……夜ですか?」
「ああ、雪の日の夜だ。例年よりは、少し早めの雪だったな。そのことは、坊主から聞かされたんだが……お嬢ちゃん、知らなかったのか?」
私は恥ずかしながら頷いた。当時の私には、そんなことを聞く余裕なんてまったくと言っていいほどなかったのだ。
そんなことを訊く精神状態じゃなかった。
「そうか……まあいい。お嬢ちゃんと俺が初めて出会ったのは、一体いつのことだったかな?」
「確か……。」
確かあれは、ある日の午後のことだ。