彼の瞳に独占されています
私もまだそんなに歳じゃないのに、いつも輝いている弥生ちゃんとはどうも差があるように思う。

こんなに可愛くて、嫌味も嫌味に聞こえないような愛嬌のある子なのに、どうして独り身なんだろうか。


「何で弥生ちゃん彼氏いないんだろう」


そう言って、柔らかいカルビを口に放り込むと、彼女はキョトンとする。


「どうしたんですか、急に」

「ずっと前から思ってたの。お客さんから言い寄られたりもするんでしょ? その中でいいなって思う人はいないの?」


コンロの熱で火照った身体に涼しい夜風を受けつつ、今さらながら単純に気になったことを聞いてみた。

男性のお客様が多い職場だから、出会いがないわけではないし、弥生ちゃんが引く手数多なのは百も承知だ。

それなのに彼氏を作らない原因って……と、いくつか考えを浮かべていると。


「いいなって思う人、できたらラクなんですけどね~……」


弥生ちゃんは、伏し目がちに苦笑を漏らして言った。その憂いを帯びた表情を見て、やっぱり何かワケがあるんだろうなと推測する。

過去の恋愛で何かトラウマのようなものがあるのか、それとも、実は好きな人はいるけど、その相手がバツイチだとか妻子持ちだとか……。

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