彼の瞳に独占されています
弥生ちゃんが言うのはもっともだ。何の反論もしようがない。

本当に私は、どうしようもなくバカな女だ。ここまで言われなければ自分の気持ちがわからないなんて、格好悪すぎ……。


しかし、自分の愚かさを恥じると同時に疑問も湧いてくる。どうして、弥生ちゃんはこんなに怒っているのだろう?と。

たしかに、今の私の発言にイラつくのはわかる。でも、それだけでいつも温和な彼女がここまで怒るなんて、どうもふに落ちない。

肩を落としながらも釈然としないでいると、弥生ちゃんは少し語調を弱め、けれどムッとしたまま言う。


「どうして素直になれないんですか? 今まで散々条件を気にしてきて、結局好きになったのが安月給の警備員だから、カッコ悪いとか思ってます?」

「っ、そんなわけないじゃない! あいつの存在は誇らしいわよ!」


今の言葉には思わずムキになってしまい、本音が飛び出した。

すると、今まで固かった弥生ちゃんの表情が、わずかにほころぶ。


「ちょっと正直になってきましたね」


うっ、もしや挑発されたのか……。今日の弥生ちゃんは、なんだか私より年上かと思うくらい上手(うわて)だ。

でも、おかげで気付いた。給料とか肩書きとか、本当は私も気にしたくなかったんだって。

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