雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 律樹はノートを広げて勉強するつもりだったが、なかなか頭に入ってこない。家にいると萌果が邪魔しに来るので、時々こうして一人ファミレスに来ているのだが。


「なんでだ……」


 声にならない声でつぶやく。あの日、電車で那子を痴漢から庇った日から、何かがおかしい。勉強していても、ふと那子の弱々しい表情が思い浮かぶ。ヤンキーで気が強くて、肩で風を切って歩くようなイメージだった那子に、あんなにか弱いところがあったなんて。

 そう言えば、保健室登校になったのは何故なんだろう。気が強いヤンキーなら、とっくに学校を辞めているのではないか。実は、那子はそんな強くないのではないか。律樹の中に、ずっとそんな疑問があった。

 アイスコーヒーを飲み干した律樹は席を立ち、ドリンクバーのカウンターに向かう。店員がグラスの補充をしていたので少し待っていると、気付いた店員が、身を引いて会釈した。
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