雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「あっ」


「あ、桜川……」


 店員は那子だった。お互いにしばらく言葉が出ない。先に口を開いたのは那子だ。


「今日は、江坂シフト入ってないよ」


「知ってる」


「そう」


「あぁ」


 グラスにアイスティーを注いでから那子を見ると、再びグラスを並べていた。


「サンキューな」


「え?」


 那子が驚いたように振り返る。


「うまかった。ブラマンジェ」


「あ、あぁ。別に、ホント送ってもらったお礼だから。何の意味もないし」


「遠征してきたのに、手ぶらで帰して悪かったな」


「いいって。じゃ、バイト中だから」


 足早にキッチンの方へ入っていく那子の後ろ姿を見送って、律樹は席に戻った。
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