雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
 悠李と別れた後――。

 どうしてあんな事を言ってしまったのか、萌果は自分で自分がわからなくなっていた。よりによって、大嫌いな江坂悠李に、一緒に花火大会に行ってくれなんて。しかも悠李に言われるがまま、LINE交換まで。

 ――大嫌い……? どこが? チャラいから?

 自問自答しながら、実は悠李はそんな嫌なヤツじゃないかも、と思っている萌果がいた。

 悠李に触れられた額にそっと手を当ててみる。ひんやりとした冷たい手の感触を思い出し、萌果はぶるぶるっと首を振った。

 ――萌果はお兄ちゃん一筋なんだから!!

 花火大会に律樹は誰と行くのか、その相手をこの目で確かめなくてはならない。

 ――それがもし萌果の知らない女の人だったら……?  

 そんな場面を目の当たりにしたら、自分がどうなるか想像もつかない。でも、行かなきゃいけない。萌果は使命感のようなものを胸に抱いて、家路を急いだ。
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