雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
解けない謎と誤解がそこに生まれた
 吹奏楽部はコンクールを迎え、夏休み返上で練習の毎日を送っていた。地区大会は無事突破し、次は県大会出場だ。

 千咲希はあれから会っていない匡の事が、頭から離れずにいる。連絡先も交換も知らないので、学校で会えたらと思っていたが、野球部の練習にも来ていないようだった。

 自分が声を掛けに行った事が、逆効果だったのかも知れない。『もう話し掛けるな』と言われた事がショックで、練習にもあまり身が入らない。

 音楽室で全員での課題曲練習も、なかなか音が合わずにいた。


「もう一回、最初から!」


 顧問の苛立った声で、皆背筋を伸ばす。

 こんな事じゃダメだ。頑張らなきゃ! 千咲希は深呼吸をして、サックスを持つ手に力を込めた。
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