雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「帆鷹、ここ見ていかね?」


「おぅ」
 

 新太の後から靴屋に入り、スニーカーなどを見て回る。キャンバス地のバスケットシューズを手に取り眺めてみた。


「それ、帆鷹に似合いそうだな」


「そうか?」


 その時、ジーンズのポケットに入れていた帆鷹のスマホが振動した。手にしていたバスケットシューズをもとの位置に戻し、スマホのLINEを開く。


《久しぶり。九条くんに聞いてほしい事があるんだけど、近いうち会えないかな?》


 それは野原絵里奈からのLINEで。少し迷った帆鷹だったが、すぐに返信した。


《いいけど、いつ?》


 すぐに既読になり、メッセージが届く。


《早い方がいいんだけど……。修学旅行中でもいい?》


《別にいいけど》


《ありがとう。じゃあ、旅行中早目に連絡いれるね》


《わかった》


 帆鷹はそう返信しつつ、面倒だと思う修学旅行が、更に面倒に思えて、小さな溜め息を漏らした。
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