隣に住むのは『ピー…』な上司
「おはよう。真由香」


弾むような声で挨拶をしたからでしょうか。


「おはよう、アイ。何?何かいいことでもあった?」


楽しそうに聞き返されてしまった。


「ううん、何もない」


そうは言っても幸せな気分が溢れていたのかもしれない。


「そう?この頃やたらウキウキしてるよ。何だか雰囲気も明るくなったし、恋でもしてるんじゃないかって皆が噂してた」

「噂!?私の!?」


ヤダ。何も知らなかった。


「まぁまぁ悪い噂じゃないし大丈夫。人の印象が良いように変わるのなんて稀だからラッキーだと思っとけばいいよ」


真由香はアッサリしている。

私が課長と付き合っていると知ったらどんなに驚くことだろう。


「それよりもさ、私、昨日また見ちゃった!」


悪戯っぽく笑ってウインクして見せた。

自分の話したい情報をいの一番に聞かせる時の真由香のクセ。


「何を見たの?」


いつもの上司のお笑いネタかな…と半分呆れながら耳を傾けました。


「小日向課長がね、アウトレットモールで見た時と同じ美人と一緒に買い物してたの。それがね、本当にお似合いでさ……」



(えっ……)



話半分で愕然としてしまった、
後にも先にも「美人」って言葉しか耳に入ってなかった。



「まさか……」


頭に浮かんできた思いが声になって出たみたいです。


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