隣に住むのは『ピー…』な上司


(……そっか。そうだった)


思い出した途端、気持ちが急に萎んだ。

私はただの宿借りにしか過ぎなかった。

本当の宿屋は別にあるんだ……。



急降下していく気持ちを紛らすように仕事を始めた。
電話がかかるのを期待せず部屋に戻ると、小鳥は昨日と同じくらい嬉しそうに喜んでくれた。



『ピピッ!ピピッ!』

「ピーチ、ただいま」


ありがとう。
この言葉を私に言わせてくれて。


じぃーんと胸の中を潤ませているとケイタイの着信音が鳴りました。

バッグの中から取り出してみると、『課長』という文字が表示されている。


何も考えずに出ようと決めた。
私と課長の関係は、小鳥の世話だけで繋がっている。




「もしもし……」


しまった。
声がスゴく暗い。



「白鳥くんか?」


課長の声は明るめ。
それはそうだ。
大口契約の決まった後だから。


「そうです。お疲れ様です。課長」


あくまでもこの人は上司。
そのスタンスを忘れてはいけない。


「昨日は連絡できなくて悪かった。取引先に誘われて遅くまで付き合わされたから」

「い、いいんですよ、別に。こっちは何ともありません。ピーチちゃんは元気でいますし、昨夜から調子が良くなって可愛い声で鳴いてくれるようにもなりました」


ほら…とケイタイを近づけた。
『ククク』とか『キュルキュル』とかいう声を聞いて、課長は安心したようにお礼を言った。


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