君だけを見つめてる。〜10年間の純愛ラブストーリー〜
焼肉屋さんを出て、左方向に家があるのはあたしと孝之。
反対方向なのが潤。
「じゃ、またあしたね」
「うん、またあした」
「おうよ!じゃーな」
潤と分かれてから、あたしたちの家があるまで20分くらい歩く。
やっぱり、孝之の隣は落ち着く。
3人でいるときも大好きだけれど、生まれたときから一緒にいる孝之の隣。ふたりでいることも大好きなのだ。
「おれさー」
いきなり、孝之が話し始めた。
「んー?」
「甲子園。いきてーんだよ」
「うん」
「それまでは、邪念は捨てるって決めたんだ」
「あー、先輩のこと?」
「うん…」
「そっかー。それで後悔しないならいいんじゃない?」
「しかも、杏里との約束も果たさねーといけねーしよ」
「ふふふ。まだ覚えてたの?」
最後に、約束の話をしたのは中学3年の時。
もう忘れてると思っていた。
「覚えてるよ。約束したからな」
「ほっほーん。待ってるよじゃあ」
「おうよ」
その約束とは。
あたしと、孝之。
生まれたときから親たちも仲良くて。
ずっと一緒に生きてきた。
あたしの1番の理解者であり、兄妹みたいに育ってきた。
そのあたしたちは、小さいときから釘付けになっていたもの。
それが、野球。
孝之のパパがずっと野球が好きで何回も一緒に野球見に行った。
小学3年生で初めて見に行ったとき。
孝之は、キラキラした目をしてあたしに言ったんだ。
「一緒に甲子園にいこう、杏里」
「うん、約束ね」
あたしは、女の子は甲子園にいけないことを知らなくて。
知ったときは大泣きした。
小学生であたしは野球をやめて、孝之は中学でも続けて、この学校に推薦できた。
ここの学校は、1番甲子園に近いから。と。
あたしは別に違う学校でもよかったけれど、家からも近かったし、親も当然かのように孝之と同じ学校にいくと思ってたらしく。
第一志望にしていた、少し遠い学校を蹴って入学した。
潤も知らない、あたしと孝之の約束。
なんで、まだ覚えてるのかなあ…?