君だけを見つめてる。〜10年間の純愛ラブストーリー〜
あたしの家が手前ですぐ奥の家が孝之の家。
「じゃあ、またあしたね」
「おう。」
孝之が、大きなエナメルバックを背負った後ろ姿を見送ると家に入った。
「たーだーいーまー」
「おかえり」
あたしの家にはママがいない。
あたしが生まれたときに死んじゃったんだ。
それからパパとふたりで暮らしてる。
パパはあたしと似ていない。
どちらかというともの静か。
パパはよく言うんだ。
「お前は、ママに似ていて美人だし性格も似ている」と。
それは嬉しいしパパも大好き。
でも、あたしのせいでママがいなくなってしまったという事実。
あたしの誕生日はママの命日。
このことは、孝之しか知らない。
孝之はあたしのことをきっと、大切に思ってくれている。
恋愛関係ではなく、固く結ばれた家族のようなもの。
すごくありがたいし、今笑えてるのは孝之のおかげと言ってもおかしくない。
でも、どうしても辛いのだ。
パパはあたしをどう思っているのか。
あたしの誕生日を迎えて毎年辛いのだろう。
そんなあたしはパパといてもいいのだろうか。
孤独感に見舞われるのだ。