ミラージュ
……………
「だから、ここにxを代入するじゃろ?」
「は?何で?」
「じゃなきゃyが出んわーや!」
「そんなん知らんっちゃ!だいたいなんでxに置き換えるかがわからん。yの範囲って何よ?」
「…無理。お前、根本的にわかっちょらんわ」
数学のすの字もできないあたしの前で、さすがの良平も天を仰いだ。
「ちゅーかこれ、中1の範囲なんじゃけど…」
「あたしが中1で学んだことは、マイナスになる数字もあるってことだけじゃもん」
自慢気に言うあたしに対して、良平はびっくりするくらい大きなため息をつく。
「ナツ、高校行く気あるん?」
「あるに決まっちょるじゃろ?」
「ちなみに、どこ狙い?」
「…西高?」
「…こりゃ先生も焦るわけだわ」
いい加減呆れた表情で、教科書をパラパラと捲り始める。
「そういう良平はどこ狙いなん?」
「南」
「南!?めっちゃ頭いいとこじゃん!!」
「だって俺、頭いいもん」
反論はできなかった。良平は言うだけあって、かなり頭がいい。同じだけ部活をやっていて、不公平だと何度も思った。
それだけ努力もしてるわけだけど。