ミラージュ
「…良平ぇっ!!」
廊下にあたしの声が響いた。
廊下の先で、良平が振り向く。
「…きだったよ…」
ずっと言えなかった言葉。
もうどうにもならないけど。
それでも。
「大好きだったよぉっ!!」
…大好きだった。
誰よりも、良平が大好きだった。
片想いだったけど、叶わない恋だったけど、それでもあたしの全ては良平だった。
あの春先のグラウンドから、ずっと。
「…俺も、ナツのこと大好きじゃけぇ!!」
良平の声が、春の廊下に響いてあたしの耳に届いた。
涙でぐちゃぐちゃの顔を上げる。
廊下の端には、あたしの大好きな良平の笑顔があって。
「また会おうなっ!」
良平が叫ぶ。
制服の袖で涙を拭って、あたしも思い切り叫んだ。
「うんっ、また会おうねっ!」