さよならはまたあとで

『これより、ファッションショーの表彰式を始めます。生徒は全員、グラウンドに集まってください』



実行委員の放送係のアナウンスが校内に響き渡った。

もう一般客はいない。

グラウンドの真ん中で、ぐるりと辺りを見回す。

髪に挿したかんざしの飾りが揺れる。

見つけたい人が見つからず、私の視線は下に落ちていく。


いない。


律太がいない。


じわりと目元が滲む。


約束…したのに。


「はい笑ってー!!」


私の顔がむにっと掴まれた。
そのまま上にぐいっとあげられ、変な笑顔になる。


「うぅぅぅ」


半分涙目で睨みつける。
目の前に居たのは明良だった。


「優恵ぶさかわー」


明良はくしゃっと鼻にしわを寄せて笑った。

後ろで呆然とこちらを見つめる渚と七瀬に気づくと、彼は手を離して少し照れた顔をした。


「とりあえず、笑っときなさい」


彼はぽんぽんと私の頭を撫でると人ごみの中に消えていった。

さっきからなんなんだろう、あの人は…
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