さよならはまたあとで

ペンギンは屋外のプールにいた。
途中、別の水槽に寄り道をしながらだったから、少し遠回りしてきた。

相変わらず明良の手は私の手を離さない。


「ほら見てー!すごく可愛いよねぇ」


彼は綺麗な瞳をうるうるさせながらペンギンを見つめる。


「うん、可愛い」


私も頬を緩めた。
愛らしいペンギンの親子がよちよちと、明良の方へ寄ってくる。


「わぁぁ、ファンサービスだよぉ」


明良は柵から身を乗り出して喜んでいる。
律太も水族館好きなのかなぁ。

あ、

また思い出すのは律太の顔だった。

そういえば彼は…

携帯の画面を開いて彼のメッセージを探すけれど、やっぱりどこにもなかった。

彼が来なくて悲しかったのは、少しでも残念だと思ったのは…きっと、きっと、私が律太に恋してるからだ。
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