さよならはまたあとで
手首に巻かれたフリーパスを係員に見せると、私たちは黄色に塗装されたゴンドラに乗り込んだ。
だんだんと地面が遠くなっていく。
キラキラと光る絨毯が見渡す限り何処までも広がっている。明良も身を乗り出すようにして窓から外を眺めていた。
少しずつ頂上が近づいていくにつれて、私の鼓動は早まっていく。
あと少し。
あと少し。
隣のゴンドラが見えなくなった。
とうとう頂上に来たのだ。
時間はそんなにない。
躊躇っている暇はない。
「好き…!」
ぎゅっと目を瞑って、絞り出すように私は自分の気持ちを言葉にした。
やっと言えた言葉。
やっと認められた気持ち。
あとは、律太の言葉を待つだけだ。
少しずつゴンドラは降りていく。